私はアメリカに一年間、留学しました。この目的はネイティブが話す、遠慮のない速い英語を理解して、テレビドラマなどを理解出来るようになることです。
私は会話クラスに半年、大学の公開講座で半年、勉強しました。公開講座ではわたくしも含めて日本人が5人いました。
私以外は優秀なので、ユーチューブの動画のほうが効果があるとは夢にも思わないでしょうが私はそこまで力がありませんでした。
何の力かといえば特にリスニングの力です。
飛行機が到着した地方空港にはホームステイをする家の人が迎えに来ていました。
その方の家に行って話を始めたら何となく違う。英語が何か違いました。
それで恐る恐る、失礼を承知であなたはアメリカ人ですか、と尋ねたら「アメリカ人です。でもドイツから来ました。夫はアメリカの生まれです。」と言われました。
そうなんです。アメリカの最初の出会いがドイツ訛りの英語でした。
でももちろんアメリカ人です。
彼女の夫はネイティブです。ただあまり話さない人で、あるとき、「わたくしは会話が得意ではないので妻と話してください。」と言われました。
別に、これはわたくしと話す気がないというより寡黙な性格のせいといったほうがいいと思います。
仕事はメカニックで、もくもくとすることが好きなようです。
ただこのホームステイという制度には問題がありました。家の方が英語があまり話せないケースとか、約束をした食事を出してくれないとか日本人にとって困る問題がたくさんありました。
あるとき、会話学校の日本人の学生から、「私の家に来て、ホストファミリーの様子を見て、」というようなことを言われました。
行ってみるとホストファミリーは居間でテレビを見ながらくつろいでいました。
彼女は台所でポツンとしていました。そうなんです。彼女のホストファミリーは若いカップルで一緒に会話をするというような感じではなかったです。ただ、「一緒に話をしませんか。とかそういうことは話した。?」と聞くとしてないとのことでした。
でも、それは彼女にはなかなかできない行動のようでした。これはちょっと彼女に積極性がないかなと思いましたが。
まだまだいろいろなホームステイの問題はありました。
ただわたくしのホストファミリーは奥さんがドイツ生まれのせいか、食事がおいしいし、洗濯もやってくれます。これはびっくりです。
そのためにそこを変えることはなかなかできませんでした。
ただ一年間、いたのだからホームステイ以外のコミュニティがあるはずだと思うでしょう。
最初の半年は会話学校なのでみんな主にヨーロッパ人です。
次は大学の公開講座ですのでここは当然、ネイティブです。
そこでの最後の三か月は課題が与えられるので、グループになってそれをやり遂げます。
これはやりたい課題別にグループになるのでわたくしはジョー君と組むことができて喜びました。
かれはネイティブで問題ありません。他の学生のなかにはスペイン語なまりの英語を話す学生もいて、それは少しわかりにくかったので本当に運がいいなと思いました。
彼と組んで行う課題について話しているとき、あれっと思いました。
彼の英語は遅いのです。そこで「わたくしは普通に話してもわかるから普通に話して、」と頼みました。
彼は、ああそうなんだと言って速い英語を話し始めます。
でもまた5,6分すぎると遅い英語に戻ります。
それで不思議に思ってなぜ、そんなにゆっくり英語を話すのかと聞いたところ驚きました。
「あれそんなに遅いかな。ただボランティアで中国人の学生達に英語を教えているせいかもしれないな。」
驚きました。グループを変えたくなりました。しかし、たまたま二人のグループなのでそれができません。これでは意味がありません。だいたいどこでナチュラルな英語を聴くことができるのか。
ホームステイは新しい家に移っていました。今回は夫婦ともネイティブで奥さんは相当速い英語を話しをしているように感じました。
ただあと一か月でアメリカ生活が終わるという時期にスイスの学生がこんなことを言ってきました。
この学生はわたくしと同じ家にホームステイをしている人です。この家にカップルで来ている社会人で、今は会話学校の学生です。
あるとき、彼が「学校の先生の英語とか、ここの奥さんの英語はわかるのだが、町で普通の人と話すと英語がわからないんだよね。」と話してきました。
そうなんです。これはわたくしも感じていたことです、じゃあ、奥さんに尋ねてみようよ。
買い物から戻ってきた奥さんにその話をしてみたら
「そうだよ。あなたたちと話すときは普通の話し方ではないよ。言葉を省略したり、わかるように特別な話し方をしているよ」
「だからオクラホマの親戚と話をすると変な英語だと笑われるのよ。」ハハハと笑っていました。
がーん。ですね。その頃のわたくしの力ではそういう違いはわかりませんでした。
実は日本にいるころ グレゴリ・ストリカーズ著 ーなぜ「英語」が聞きとれない、話せないー (英友社)という本を読んでいて、日本の英語産業は、英米人にゆっくり話すことを要求し、見せかけの英語を生産しています。
というくだりがありました。だからわたくしは英語の本場ではそういう英語産業のような儲け主義にとらわれず、本当の自然な英語が学べると信じていました。
でも、実際は違いました。ホームステイの奥さんは英語産業とはかかわりがありません。まあ全然ないとは言えないのですが、それはホームステイの生徒は会話学校からの紹介ですから。
なぜ、笑われるような英語を話しているのか聞いてみたら、以前、滞在していた学生とのコミュニケーションがうまくいかなかったので、ナチュラルに話すことをやめたということでした。これは自発的です。
またこの笑われる英語というところにも引っ掛かりました。実はストリーカーズさん本人も一度アメリカに戻ったとき、弟や友人が彼の英語に対して笑い転げていたというエピソードを披露しています。
結局、わたくしは一般のネイティブの人からは笑われるような英語を一年間勉強したのだということがわかりました。
でももう、時間がありませんでした。そろそろ日本に帰る準備もしなくてはいけないし、公開講座は課題も終わっていたので新しい、人間関係は作れません。
ただもう一つ最後の砦がありました。それはわたくしはアメリカ滞在中一日に約、3時間はテレビを見ていました。
そのころヒアリングマラソンとかいうのがあって、一年で1000時間くらい、集中して英語を聴いていたらリスニングの力が伸びるというものでした。続く。